ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)とは、特定の企業(アカウント)をターゲットとして定め、営業部門とマーケティング部門が連携してアプローチを継続する手法です。個人のリード獲得を優先する従来のマーケティングとは異なり、確度の高い企業へリソースを集中させます。
各工程でやるべきことを正しく理解し、順番に進めることがプロジェクト成功の鍵です。本記事ではABMを進める際の流れについてまとめました。
アカウントの選定作業に入る前に、プロジェクトの前提条件を定義します。
まずは「目的」の明確化が必要です。大型案件の創出を目指すのか、既存顧客のアップセル(深耕)を狙うのか、あるいはLTV(顧客生涯価値)の向上を重視するのか、経営課題に即したゴールを設定します。
次に「範囲」を決定します。最初から全社規模で展開するのではなく、特定の製品や地域に絞ったパイロット運用から開始することで、リスクのコントロールが可能。どこまで対象を絞り込むか、初期段階での合意形成が重要です。
最後に「体制」を整えます。営業部門とマーケティング部門が役割を分担しつつ、同一のアカウントを追いかける協力体制が不可欠です。両部門が同じ指標(KPI)を共有し、定期的に進捗を確認する会議体を設置するなど、組織間の同期を図ります。
ABMの成果は「攻めるべき企業」を正しく選べるかどうかにかかっています。はじめに行うのがICP(Ideal Customer Profile:理想的な顧客像)の設計です。業種、企業規模、売上高、抱えている課題、導入済みの技術環境など、自社のサービスが最も価値を発揮できる企業の条件を具体的に定義します。
ICPが定まったら、条件に合致する企業をリストアップし、ターゲットアカウントを選定。候補企業をすべて同列に扱うのではなく、成約の可能性や期待収益に基づいて優先順位(ティアリング)を付ける作業が効果的です。
成約確度の高い企業へリソースを集中させることで、営業効率と投資対効果を高められます。
ターゲット企業が決まった後は、その企業内部の解像度を高めます。法人営業であっても、実際に意思決定を行うのは「人」です。決裁者、推奨者、利用者、選定担当者など、購買プロセスに関与する人物を洗い出し、それぞれの役割や関心事を仮説として整理します。
企業の置かれている状況や、課題の顕在化レベル(購買プロセスのどの段階にいるか)を把握することも欠かせません。新規プロジェクトが発足しているか、競合製品のリプレイス時期かといった情報を収集し、タイミングに合わせたメッセージを用意します。
エンタープライズ企業のような大規模組織ほど関与者が多くなるため、精緻な人物設計が商談化率を左右します。
アカウントへの理解に基づき、具体的な接触施策を設計する段階です。「誰に」「何を」「どの順番で」「どのチャネルで」届けるかという全体シナリオを描く工程を、オーケストレーションと呼びます。Web広告、パーソナライズされたメール、ウェビナー、インサイドセールスによる架電、手紙など、オンラインとオフラインのチャネルを組み合わせるのが一般的です。
重要な点は、営業部門とマーケティング部門がターゲット企業の反応(エンゲージメント)をリアルタイムで共有し、次のアクションを同期させること。マーケティング施策で関心が高まったタイミングを見計らい、営業がアプローチするといった連携が求められます。
一貫性のあるメッセージを複数の接点で積み重ねることで、顧客の信頼を獲得し、組織的な意思決定を後押しします。
オーケストレーションで設計したシナリオに沿って、各チャネルの施策を実行します。
この段階でのポイントは「実行の一貫性と次アクションまでの速さ」です。特定の資料ページ閲覧やウェビナー参加などの反応が出たアカウントは、営業がすぐにフォローできるよう、反応内容を共有します。マーケ側は反応の強さに応じて出し分け(追加コンテンツの配信、リターゲティングの強化など)を行い、営業側は温度感に合わせた接触へ繋げるといった連携が必要です。
また、アカウント内の関与者は複数に広がるため、1人の反応だけで判断せず、決裁者・推奨者・利用者などへの接触が広がっているかも確認します。
施策実行後は結果を測定し、次のサイクルへ活かします。測定すべき主な指標は、ターゲット企業のアカウントエンゲージメント(Web閲覧やメール開封などの反応)、商談化数、パイプライン(案件)総額、受注率などです。
得られたデータを分析し、ターゲット選定の基準やメッセージの内容、使用したチャネルの配分を見直します。改善を繰り返すことでABMの精度を高め、徐々に対象アカウント数や適用範囲を拡張していく運用が理想的です。
ABMツールは、ここまで解説した一連の流れを円滑にするために存在します。主な役割は、ターゲット企業の管理(リスト化や優先順位付け)、社内に散在するデータの統合と名寄せ、顧客エンゲージメントの可視化、そしてメールや広告といった施策の一元管理です。
ツール自体が戦略を立案するわけではありませんが、手作業による工数負荷や、部門間の情報の分断といった摩擦を減らし、PDCAサイクルを高速化させるための基盤として機能します。
ABMは、ICP設計から測定・改善までを一度で終わらせるのではなく、学習しながら精度を上げていく取り組みです。特に、営業とマーケティングの連携を仕組み化できるかで、商談化のスピードと再現性が大きく変わります。
ABMツールを使ってターゲットアカウントの管理やエンゲージメントの可視化、施策の一元管理を行い、CRM/SFAやMA、広告などと連携して運用するのが効果的です。
ABMツールと一口に言っても、その活用方法は営業部門とマーケティング部門とで異なります。
ここでは、インバウンド営業・アウトバウンド営業それぞれの特性に応じて、アプローチ可能なフェーズや手法に違いのあるツールをご紹介いたします。ツール選びの参考にしてください。