インテントデータとは、見込み客がオンライン上で示す行動から「購買意図(インテント)」を読み取るデータのことです。検索クエリやサイトの閲覧履歴、資料ダウンロード、SNSでの反応などが含まれ、リアルタイムに収集されるため、潜在顧客の関心や課題を正確に反映します。
従来のBtoBマーケティングでは、自社サイトへの訪問やフォーム送信がなければ興味関心を把握できませんでした。しかしインテントデータを使えば、競合比較記事の閲覧や製品カテゴリの検索といった「自社サイト外での情報収集行動」まで捕捉し、今まさに検討を進めている企業を特定できます。まずは自社が何を得たいのかを明確にし、シグナルの強さを見極めることが出発点となります。
インテントデータは、収集方法に応じてファーストパーティ・セカンドパーティ・サードパーティの3種類に分類されます。それぞれ精度やカバー範囲、コストが異なるため、目的に応じて組み合わせることが重要です。
ファーストパーティデータとは、企業が自社の顧客から直接収集するデータです。自社Webサイトの閲覧履歴や滞在時間、フォーム入力、資料ダウンロード履歴、メールの開封・クリック履歴、CRMに蓄積された会員情報などが該当します。
大きな特徴は精度の高さと信頼性で、外部プロバイダーを介さず自社で取得するため正確性が高く、プライバシー規制にも対応しやすい点がメリットです。一方で、収集範囲は自社と接点を持ったユーザーに限られるため、既存顧客を軸にした施策が中心となります。
セカンドパーティデータとは、他社が取得したファーストパーティデータを提供してもらうデータを指します。ビジネスパートナーやデータ提携先との共有によって利用され、広告ネットワークやイベント主催企業、比較サイト・レビューサイトなどが情報源となります。
信頼できるパートナーから、自社の顧客情報だけでは補えないインサイトを得られるため、新しい市場や顧客層へのリーチに有効です。ただし、データの品質や更新頻度、共有時の契約やセキュリティには注意が必要です。
サードパーティデータとは、外部のベンダーやデータプロバイダーから提供・購入するデータです。複数のWebサイトやプラットフォームからユーザーのオンライントラフィックがトラッキングされるため、業界や地域をまたいだ広範な行動を網羅できます。
特徴は、自社の顧客層以外の潜在顧客にもリーチできること、定期的に更新される行動データで「今、何に興味を持っているか」を即座に把握できること、他業界のトレンドとも比較できることです。一方で、第三者提供ゆえにGDPRやCCPAなどのデータ保護法への準拠と、ユーザー同意の確認が求められます。
インテントデータが注目される最大の背景は、BtoBの購買行動がインターネット上へ移行したことにあります。近年の法人購買では、顧客が自ら情報を収集し、ベンダーと接触する前に意思決定を進める傾向が強まっています。その結果、問い合わせや商談を待つ従来型の手法では顧客のニーズを把握しづらくなり、接触前の段階で関心を捉えられるインテントデータの重要性が高まりました。
オンライン上の購買プロセスが複雑化し、顧客が複数のチャネルを経由するようになった今、「顧客が今どの検討段階にいるのか」を可視化できることが、競争優位の源泉になっています。インテントマーケティングやインテントセールスは海外では一般的な手法として定着しており、日本でも導入企業が着実に増えつつあります。
ABM(Account Based Marketing)は特定の企業に焦点を当てるマーケティング手法であり、インテントデータの活用で精度が大きく向上します。ICP(理想的な顧客像)に合致するだけでなく、「今、購買意図がある」企業を優先的にターゲットリストへ含められるためです。
たとえば自社のICPに合致する企業を抽出したうえで、インテントデータで関連キーワードを検索している企業を絞り込み、ターゲットアカウントに設定するといった流れが実践できます。企業ごとの検索履歴やオンライン行動を分析することで、パーソナライズされたアプローチが可能になり、成約率の向上が期待できます。
営業では、インテントスコアの高い企業から順にアプローチすることで、架電やメールの反応率を大きく改善できます。さらに、競合製品のレビューや比較記事の閲覧が検出された場合に営業担当へアラートを飛ばせば、競合検討を早期に察知し、適切なタイミングでフォローアップできます。
過去に商談が停滞した企業が再び関連トピックを検索し始めたタイミングを捉えれば、休眠顧客の再活性化にもつながります。「いつ・誰に・何を」提案すべきかがデータで判断できるため、限られた営業リソースを確度の高い相手へ集中的に配分できる点が大きな価値です。
インテントデータは、MA(マーケティングオートメーション)・SFA(営業支援システム)・CRM(顧客関係管理)と連携させることで真価を発揮します。顧客の興味や行動に基づいて適切なコンテンツを自動で提供したり、リアルタイムに購買意欲を把握して適切なタイミングでコンタクトを取ったりできるためです。
たとえば顧客が競合製品に関心を示している場合、自社製品の強みを訴求するコンテンツを配信し、購買を後押しする施策が展開できます。既存ツールと統合することで、データの「発見」から施策の「実行」、営業の「アプローチ」までがシームレスにつながります。
インテントマーケティングの主なメリットは、精度の高いターゲティングによる広告費の削減です。日々の行動や検索履歴に基づいて関心のあるユーザーのみへ配信できるため、無駄なコストを抑えつつ、的確な訴求が可能になります。加えて、行動が発生した瞬間に対応できるリアルタイム性により、顧客の"今"の期待を逃さずカスタマーエクスペリエンスを高められます。
固有の意図に合わせたパーソナライズでエンゲージメントが高まり、購買意欲の高いリードを直接獲得できるため、営業へ渡すリードの質が上がり営業側の満足度も向上します。競合よりも早く顧客の意図を理解できることは、マーケティング活動における競争優位の確立にもつながります。
サードパーティのインテントデータを提供する代表的なツールには、次のようなものがあります。
「Sales Marker」は設定したキーワードが検索された際に通知が届き、AIを活用した自動営業機能も備えます。「ZoomInfo」は豊富な企業プロファイルとインテントデータを融合し、効率的なターゲティングを行うことが可能です。
「Bombora」はBtoB特化で業界ベンチマークに強く、企業ごとの優先順位付けが可能です。「6sense」はAI・機械学習を活用し、膨大な購買行動を解析して高精度なターゲティングを提案します。
参照元:ギグワークスクロスアイティ(https://gigxit.co.jp/blog/blog-14995/)
導入事例として、エン・ジャパンの新事業「エンSXセールス」があります。インサイドセールス代行事業でサードパーティのインテントデータを積極活用し、クライアントのニーズに合致する企業を絞り込んでアプローチした結果、商談アポイント獲得率が2.5倍、成約率が2倍に向上し、架電数は60%削減されました。
インテントデータの活用が営業の生産性向上に直結することを示す好例です。
引用元:ギグワークスクロスアイティ(https://gigxit.co.jp/blog/blog-14995/)
導入で堅実なのは、段階的に進めることです。まずはファーストパーティデータ、つまり自社サイト訪問者の行動分析から着手し、効果が確認できたらサードパーティデータの導入を検討するといった対応がよいでしょう。
いきなり全体を変えようとせず、小さく始めて成功体験を積み重ねるアプローチが効果的です。
注意点は主に2つあります。1つはデータの精度を過信しないこと。サードパーティのインテントデータはあくまで「兆候」であり、他のデータソースと組み合わせて判断すべきです。
もう1つはプライバシーへの配慮で、個人を特定する形での活用は個人情報保護法やGDPRに抵触する可能性があるため、企業単位での活用を基本とし、法務部門と連携してコンプライアンスを確保しましょう。
インテントデータは、BtoBマーケティングと営業を「推測」から「データドリブン」へと変革する手段です。
購買意図を示すオンライン行動データを、ファースト・セカンド・サードの3種類で使い分け、ABMリストの精緻化や営業の優先順位付け、MA・SFA・CRM連携に活かすことで、ターゲティング精度とリードの質を高められます。
まずはファーストパーティデータから始め、精度の過信とプライバシーに注意しながら段階的にサードパーティを取り入れることが、成功への近道です。
ABMツールと一口に言っても、その活用方法は営業部門とマーケティング部門とで異なります。
ここでは、インバウンド営業・アウトバウンド営業それぞれの特性に応じて、アプローチ可能なフェーズや手法に違いのあるツールをご紹介いたします。ツール選びの参考にしてください。