ABMとセールスイネーブルメントはどう関係するのでしょうか。両者の基礎から連携の進め方、役立つツールまでを担当者向けにわかりやすく解説します。
まずは、記事の土台となる2つの言葉を整理します。はじめに、ABM(アカウントベースドマーケティング)の基本的な考え方と、従来の営業手法との違いから確認していきましょう。
セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、テクノロジーを活用して「売れる営業組織」をつくるための仕組みや考え方を指します。人事・研修・コーチング・マーケティングなど部門をまたぐ施策を連携させ、どの取り組みが売上にどう貢献しているかを定量的に把握・改善していく点が特徴です。
従来は営業プロセスや人材育成の施策が部門ごとに分断されがちでしたが、成果を出し続ける組織には一貫した設計・評価が欠かせません。具体的な取り組みは、大きく3つの領域に分かれます。
1つ目は、製品資料や導入事例、提案資料などの「営業コンテンツの作成・管理」です。2つ目は、オンボーディングや定期的な研修による「営業担当者のトレーニング」です。そして3つ目が、SFAやCRMなどによる「ITツールの活用」で、営業プロセスを可視化し属人化を防ぎます。これらを通じて、経験や勘に頼らない科学的な営業活動を行っていきます。
引用元:Mazrica Sales(https://mazrica.com/product/senseslab/sales/sales-enablement/)
ABMは「戦略」、セールスイネーブルメントはそれを「実行し、定着させる仕組み」であり、両者は補完し合う関係にあります。順に見ていきましょう。
ABMは、優秀な担当者の頑張りだけで継続できる戦略ではありません。ターゲットアカウントから安定して成果を出し続けるには、営業組織全体のレベルを引き上げる仕組みが必要です。
ここで力を発揮するのがセールスイネーブルメントです。たとえば、ターゲット企業の業界動向や課題に踏み込んだ質の高い提案資料・顧客事例集をマーケティングと連携して整備し、営業担当者がいつでも活用できるようにします。
さらに、キーパーソンに響くコミュニケーションやアカウントプラン策定のトレーニングを行えば、個人に依存する属人化を防げます。セールスイネーブルメントは、ABMを実行するための武器と戦術を現場に供給し、組織全体の力を底上げするエンジンなのです。
ABM施策で成果が見え始めたら、その成功を一部の担当者の手柄で終わらせず、組織全体の資産に変えることが重要です。
ABMを通じて得た「どの業界の、どの役職に、どのアプローチが有効か」という知見を、研修プログラムや営業ツール、提案書のテンプレートに落とし込みます。これにより、トップセールスだけが持っていた暗黙知が、組織で共有できる形式知へと変わります。
結果として経験の浅いメンバーでもベテランと同水準の営業ができるようになり、ABMが一過性の施策ではなく持続的な営業文化として定着していきます。
それでは、両者を実際にどう連携させればよいのでしょうか。ここでは「体制・KPIづくり」と「施策を回すプロセス」の2つの観点から、具体的な進め方を解説します。
ABMとセールスイネーブルメントを連携させる第一歩は、営業とマーケティングが同じ方向を向く体制づくりです。両部門が別々の目標を追う「サイロ化」が起きると、ABMは機能しません。
まず「ターゲットアカウントからの商談創出数」や「経由の受注額」といった共通KPIを設定し、双方の当事者意識を高めます。あわせて、役割分担と連携ルールを定めたSLA(サービスレベルアグリーメント)を締結し、定期的な合同ミーティングで情報共有と進捗確認を行いましょう。
CRMやMAで顧客情報を一元管理する環境も、スムーズな連携を後押しします。
体制が整ったら、施策を回すプロセスを設計します。まずICP(理想の顧客像)を定義し、過去の取引データを分析して攻略すべきターゲットアカウントを選定します。
次に、各企業の課題に合わせたコンテンツとアプローチ手法を計画し、営業とマーケが一体で実行します。効果測定では、従来のアクセス数やリード数だけでなく、アカウントを軸にした指標が重要です。
ターゲットアカウントからのサイト訪問率、キーパーソンとのエンゲージメント、商談化率、受注率、契約単価などを観測し、PDCAサイクルを回し続けることが成果最大化の鍵となります。
ABMとセールスイネーブルメントを支えるツールは複数あります。ABMツールを選ぶポイントは、保有するデータ件数、自社と近い業種での実績、MA・SFA・CRMなど他ツールとの連携性、現場が使いこなせる操作性の4つです。代表的なABMツールには、アドビのMarketo Engage、国産のSpeeda(旧FORCAS)などがあります。
企業データベースを連携させると、未開拓だが受注見込みのあるターゲット(ホワイトスペース)が見えてきます。ターゲット企業の選定に客観的な企業情報を加えられる点が、こうしたツールの強みです。
引用元:ferret One(https://ferret-one.com/blog/abm)
一方、セールスイネーブルメントの実行面では、営業活動を可視化するSFA/CRM、顧客とのコンテンツ共有を効率化するDSR(デジタルセールスルーム)、データ分析を担うBIツール、現場の判断を支える営業AIエージェントなどが役立ちます。
いずれか単体で完結させるのではなく、自社の目的と組織規模に合わせて組み合わせることが重要です。
ABMは価値の高い企業に絞って組織で攻略する戦略であり、セールスイネーブルメントはその成功を再現・定着させる仕組みです。
両者を組み合わせることで、ターゲットからの成果を一部の担当者の力に留めず、組織全体の営業力へと広げられます。まずは営業とマーケの共通KPIを設定し、成功の型を形式知化すること。この積み重ねが、属人化から脱却した強い営業組織づくりにつながります。
ABMツールと一口に言っても、その活用方法は営業部門とマーケティング部門とで異なります。
ここでは、インバウンド営業・アウトバウンド営業それぞれの特性に応じて、アプローチ可能なフェーズや手法に違いのあるツールをご紹介いたします。ツール選びの参考にしてください。