「ABMとThe Model、自社はどちらを選ぶべきか」と悩む担当者へ向けて、両者の違いを3つの視点で整理し、使い分けとツール選定のポイントまで解説します。
ABMとThe Modelは、どちらもBtoBマーケティングで語られる言葉ですが、性質はまったく異なります。ABMは「誰にアプローチするか(ターゲットの絞り込み)」を示す戦略であり、The Modelは「どう売る組織をつくるか(営業プロセスの設計)」を示すフレームワークです。まずは2つの前提を正しく整理しておきましょう。
ABMとは「Account Based Marketing」の略で、自社にとって価値の高い企業(アカウント)を選定し、その企業単位で戦略的にアプローチしていくBtoBマーケティングの手法です。個々のリードを広く集めて絞り込むのではなく、最初から狙った企業の意思決定者や関係部門に対して、パーソナライズしたコミュニケーションを行う「選択と集中」型が特徴です。展示会で得た大量の名刺の確度が読めない、既存顧客へのアップセルを効率化したい、といった課題の解決に用いられます。
The Modelは、2019年に福田康隆氏が著書で紹介した、米セールスフォース社の営業分業体制をまとめたフレームワークです。(同書ではさらに「分業から共業へ」の転換も論じられています)。営業プロセスを「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」の4段階に分け、各部門がそれぞれのKPIに責任を持ちながら、リードをバトンリレーのように次工程へ引き継ぎます。属人化を排し、再現性の高い営業組織を築くことを目的としており、SaaSやサブスクリプション型のビジネスと相性が良いとされています。
引用元:SATORI(https://satori.marketing/marketing-blog/the-model/)
マクロミル(https://www.macromill.com/service/words/the-model/)
両者の違いは、「方向性」「ターゲットと営業プロセス」「目的・KPI」という3つの視点で捉えると明確になります。結論から言えば、The Modelは顧客基盤を広く拡大するための「型」、ABMは狙った企業に資源を集中させるための「戦略」であり、比較する軸そのものが異なります。
最も本質的な違いは、アプローチの方向性です。The Modelは幅広くリードを獲得し、段階的に育成しながら顧客基盤を広げていく「拡大型」の発想に立ちます。一方でABMは、価値の高い特定企業に狙いを定めて働きかける「集中型」です。ABMを従来のリードベースドマーケティングと比べると、対象は「リード」ではなく「企業」、重視するのは「量」ではなく「質」、手法も広く待つインバウンドより狙って攻めるアウトバウンド寄りになります。つまり「広く集めて絞る」か「最初から狙う」かという発想の差が、両者を分ける根本にあります。
ターゲットの捉え方と営業プロセスにも違いが表れます。The Modelでは、マーケティングが集客・見込み顧客化を担い、インサイドセールスが育成して商談化し、フィールドセールスが商談・受注、カスタマーサクセスが継続・アップセルを担当します。各部門が役割を果たしながら顧客を次のステージへ引き継ぐ、いわば「流れ作業型」の分業体制です。
対してABMは、この一連のプロセスに乗せる前段で「そもそもどの企業を狙うか」を絞り込む戦略であり、選定した企業に対して部門横断で一体的にアプローチする点が特徴です。
目的とKPIの置き方も対照的です。The Modelでは、各部門が「全体KPI」ではなく「自部門のKPI」に責任を持ちます。たとえばマーケティングはMQL数やCVR、インサイドセールスは商談化率、フィールドセールスは成約率や受注金額、カスタマーサクセスは解約率やLTVといった具合に、工程ごとに指標を分けて改善の起点とします。
一方でABMは、企業単位で効果測定を行い、投資対効果(ROI)の最大化を主眼に置く点で発想が異なります。
結論として、両者は二者択一ではなく、前提条件で使い分けたうえで併用するのが現実解です。判断軸として有効なのが「ハウスリストの有無 × ターゲット規模(中小/大手)」の4象限です。狙いが大手企業であればABMが向いており、BDR(新規開拓のアウトバウンド)やリファラルを活用して一社ごとに攻略していきます。一方、ターゲットが中小企業(SMB)中心であれば、ハウスリストの蓄積を優先しつつリード獲得効率の良いThe Model型で進めるのが適しています。
さらに、ターゲット件数や単価(MRR)次第では、ABMを独立した施策として回すより、The Model式(マーケティング→インサイドセールス→商談→カスタマーサクセスの分業体制)の中に統合してしまうほうが効率的とされます。
一社ごとにアカウントプランを作り込む「エンタープライズ営業」と、効率重視のThe Model式との中間を狙う、といったように、ABMかThe Modelかを固定的に選ぶのではなく、自社の状況に応じてハイブリッドに組み合わせる発想が重要です。
ツール導入の是非を判断するうえで、ABMの効果と限界を押さえておきましょう。自社のビジネスモデルによって向き不向きがはっきり分かれる点に注意が必要です。
ABMの主なメリットは、マーケティング活動の効率化です。価値の高い顧客に施策を集中できるため、無駄な広告費やリソースの浪費を抑えられ、ROIの向上が期待できます。企業単位で効果測定を行うため成果が明確になり、PDCAを速く回せる点も強みです。
加えて、単発のリード獲得ではなく長期的な関係構築を目指すため、アップセルやクロスセルの機会が生まれやすく、営業とマーケティングの連携強化にもつながります。
一方でABMには注意点もあります。まず、単一商材しか持たない企業では、初回受注後に追加提案できる商材がなく、ABMの強みである継続的な売上拡大につなげにくくなります。
また、一社ごとに時間とコストをかけてパーソナライズするため、購買単価が低い中小企業がターゲットだと投資対効果が見合わなくなりがちです。ABMは単価が高く継続取引が見込める大企業向けに適しており、中小中心のビジネスではリードベースの手法のほうが効率的な場合があります。
ABMを効率化するツールを選ぶ際は、次の4つのポイントで比較するのが有効です。1つ目は「データベースの量と質」で、優良顧客候補を精度高く絞り込むには保有企業データが多く、売上高や所在地などターゲット選定に必要な情報が揃っていることが重要です。
2つ目は「MA・SFA・CRMなど他ツールとの連携可否」、3つ目は「自社と同じ業種での導入実績」、4つ目は「操作のしやすさ」で、無料トライアルや口コミで事前に確認するとよいでしょう。
費用相場については、月額料金はおよそ10万円〜40万円のものが多いとされています。まずは選定基準を整理したうえで、自社の体制に合うツールを見極めることが失敗を避ける近道です。
ABMとThe Modelは、比較して優劣を決めるものではなく、役割の異なる考え方です。The Modelは営業プロセスを分業する「型」、ABMは狙う企業を絞る「戦略」であり、両者は組み合わせて活用できます。
使い分けの軸は「ハウスリストの有無×ターゲット規模」の4象限です。まずは自社がどの象限に当たるかを見極め、そのうえでツール選定や併用の設計へと進めていきましょう。
ABMツールと一口に言っても、その活用方法は営業部門とマーケティング部門とで異なります。
ここでは、インバウンド営業・アウトバウンド営業それぞれの特性に応じて、アプローチ可能なフェーズや手法に違いのあるツールをご紹介いたします。ツール選びの参考にしてください。