BtoB購買の大半は営業が知らない場所で進む。ABMツールでダークファネルを可視化する方法を解説。
ダークファネル(Dark Funnel)とは、MAツールやCRM、GA4など従来のアクセス解析ツールでは追跡することができない、購買検討プロセスの見えない領域を指します。近年、このダークファネルが急速に拡大しています。その主な原因は、3rd Party Cookieの廃止やITPなどのプライバシー規制強化に加え、ChatGPTやPerplexityといったAI検索での比較、Slackなどのクローズドなコミュニティでの情報共有、匿名でのサイト巡回、展示会でのオフラインの会話など、顧客の行動が多様化しているためです。ABM(アカウントベースドマーケティング)は本来、特定の企業(アカウント)を狙い撃つ手法ですが、そのターゲット企業の意思決定が営業から見えない領域で進む以上、ダークファネルの深い理解と攻略は、ABMを成功させるための大前提となります。
BtoB購買においては、営業担当者がアプローチする前にすでに勝負の大部分が決まっています。6sense社の調査によると、BtoBバイヤーは営業と接触する前に購買ジャーニーの約70%を完了させていると報告されています。さらにGartner社の調査では、バイヤーが購買プロセス全体の中で全サプライヤーの営業と接触する時間はわずか17%にとどまり、複数社を比較検討する場合には1社あたり5〜6%まで下がると報告されています。営業責任者がリードを受け取った時点では、すでに候補が2〜3社に絞り込まれており、自社がそのリストに入っていなければ勝負の土俵にすら上がれない現実があります。
参照元:マーケトランク|7割のBtoBバイヤーが潜む「ダークファネル」攻略法(https://www.profuture.co.jp/mk/column/about-btob-dark-funnel)
フォームからのコンバージョン(CV)だけを追うマーケティングには明確な限界があります。BtoBサイトを訪問するユーザーの約97%は、フォームへの登録や問い合わせに至らず、匿名のままサイトを離脱していると言われています。また、Forrester社の調査では、BtoB購買者の92%が企業へ問い合わせる前にすでに導入候補のショートリストを保有していることが分かっています。ダークファネルを放置すると、マーケティング責任者は広告やコンテンツの正しいROIを評価できず、営業部門も確度の低いリードに時間を浪費してしまうという構造的な機会損失が発生します。
参照元:経営ハッカー|気づいていますか?BtoBマーケティングの問題。97%のアンノウン(匿名)潜在顧客にどう対応するか~SATORI植山浩介氏に聞く(https://keiei.freee.co.jp/articles/i0101874)
参照元:マーケトランク|【図解】ダークファネルとは?BtoBマーケティングで「見えない顧客行動」を捉える方法(https://www.profuture.co.jp/mk/column/what-is-dark-funnel)
決裁権を持つマネージャーや経営層など、重要な意思決定者ほど匿名で動く傾向があります。彼らは安易に資料をダウンロードしたりフォームに個人情報を入力したりせず、匿名の状態で料金ページや導入事例のページを繰り返し閲覧しています。さらに、SlackやLINE、X(旧Twitter)のDMなどを用いた「ダークソーシャル」経由での情報のやり取りは、リファラー(参照元情報)が失われるため、解析ツール上ではすべて「Direct(直接流入)」として計測されてしまいます。これが、営業責任者が本当にアプローチすべき隠れた決裁者の動きを掴めない大きな理由です。
ダークファネル攻略の第一歩は、IPアドレス解析を用いて匿名アクセスを行っている「企業名」を特定することです。特定したIPアドレスを、SalesnowやどこどこJPなどの企業データベースと連携させることで、業種、売上規模、従業員数といったファーモグラフィックデータ(企業属性情報)を付与できます。これを自社のABMターゲットリストと突合させることで、「自社のICP(理想の顧客プロファイル)に合致する企業が、どのページを何回見ているか」までを可視化でき、商談化前の有効なアカウントスコアリングとして活用できます。
インテントデータ(購買意図データ)を活用することで、自社サイト外での検討行動を捉えることができます。検索行動や比較サイトの閲覧、競合事例の閲覧といったシグナルをABMツールで検知するアプローチです。このデータを活用すれば、自社サイトへの訪問がまだ発生していない段階であっても、「現在、検討モードに入っている企業」を先回りで把握することが可能になります。これにより、インサイドセールスが決裁層に対して適切なタイミングで能動的なアプローチを仕掛ける状態を作れます。
ターゲット企業のエンゲージメントを可視化し、それに応じたコンテンツを提供することが重要です。ABMツールが提供するダッシュボードを活用すると、どの来訪企業が、どのコンテンツを、どれだけ深く読み込んでいるのかを可視化できます。さらに、その企業の業種や規模に合わせて事例コンテンツなどをパーソナライズ表示することで、従来のサイト内オファー施策と比較して、エンゲージメント率が最大10倍以上に向上した事例もあります。ダークファネルの段階から、購買ステージに応じた「刺さる情報」を出し分けることがCVR改善に直結します。
引用元:TRENDEMON|【ABMツール最新事例】ABM成功のカギはダークファネルとパーソナライゼーション(https://trendemon.jp/blog/abm-trend)
実際にABMツールを導入して成果を上げた事例として、NECは自社のオウンドメディア「wisdom」にABMツールを導入し、匿名の来訪企業を可視化することで、1PVごとの質を評価するマーケティング基盤へと転換しました。また、レクシスネクシス・ジャパンでは、AIとインテントデータを掛け合わせて厳選アプローチリストを作成し、高い商談化率を実現しています。
参照元:MarkeZine|NECが注目する「ダークファネル」上でのABMとは?ターゲット企業のエンゲージメント最大化への挑戦(https://markezine.jp/article/detail/41761)
BtoB購買の約7割は、営業担当者が接触する前の見えない場所ですでに完了しています。そのため、ABMを成功させるにはダークファネルの攻略が不可欠です。匿名企業のIP特定、インテントデータの取得、エンゲージメントの可視化とパーソナライズという3つのアプローチを備えたABMツールを選ぶことで、隠れた検討企業を先回りで商談化することが可能になります。まずは自社サイトに眠る95%の匿名アクセスの可視化から着手しましょう。
ABMツールと一口に言っても、その活用方法は営業部門とマーケティング部門とで異なります。
ここでは、インバウンド営業・アウトバウンド営業それぞれの特性に応じて、アプローチ可能なフェーズや手法に違いのあるツールをご紹介いたします。ツール選びの参考にしてください。