狙った企業にだけ広告を届けるABMのターゲティング広告を、基礎から実務まで整理します。
ABM(アカウントベースドマーケティング)は、不特定多数のリードではなく「取引したい特定企業(アカウント)」に集中的にアプローチするBtoBの手法です。ABMにおけるWeb広告・ターゲティング広告とは、この集中投資の考え方をデジタル広告に落とし込み、あらかじめ選定したターゲット企業とその意思決定者に限定して広告を配信するアプローチを指します。従来のBtoB広告が「幅広く獲得して後から絞り込む」設計であるのに対し、ABM広告は最初から配信対象を企業単位で絞り込みます。営業とマーケティング部門が同じアカウントリストを見ながら施策を連携できるため、広告費を商談化しやすいターゲットへ集中投下できる有効な打ち手となります。
最も代表的な手法が、企業の固定IPアドレスを識別し、その企業からのアクセスに限定してバナー広告などを配信するIPターゲティング広告です。国内のIPアドレスはISPや企業などの組織単位で割り当てられており、大手企業を中心にセキュリティ目的で固定IPが広く利用されているため、企業単位で高精度にアクセス元を絞り込めます。近年、Cookie規制によってサードパーティCookieに依存した従来のリターゲティングが難しくなる中、IPアドレスを活用した手法は企業単位のアプローチを継続できる有力な代替手段として注目を集めており、ABM広告の中核を担っています。
DSP(Demand-Side Platform)と法人属性データベースを組み合わせることで、「業種が自動車メーカーのみ」「売上100億円以上のIT企業のみ」といった精緻な条件で配信対象を絞り込めます。さらに名刺管理データなどと連携させれば、「売上100億円以上のIT企業の総務部門」といった具合に、企業属性と特定の部署・役職を掛け合わせたピンポイントの配信も可能になります。営業のアタックリストがすでに存在しているABM施策と非常に相性がよく、「絶対に取引したい100社」だけに狙いを定めた無駄のない運用も可能となる手法です。
LinkedIn広告などに代表されるSNS広告も、ABMを実行する強力なチャネルです。事前に用意したターゲット企業のリストをプラットフォームにアップロードし、その企業に所属する従業員に限定して配信する「マッチドオーディエンス」機能を活用します。これに業種や企業規模、役職といったBtoB特有のターゲティングを掛け合わせることで、キーマンとなる意思決定者へダイレクトに広告を届けることができます。ABMの対象層(1:1、1:Few、1:Many)に応じた配信規模のコントロールがしやすい点も大きな魅力です。
検索連動型のリスティング広告やSEOで広く集客した場合、自社のターゲットから外れる中小企業や個人事業主からの問い合わせが多くなりがちです。しかし、ABMターゲティング広告は「ターゲットとなる企業にしか最初から配信しない」ため、対象外リードの流入を構造的に防ぐことができます。実際に、従来の施策では対象リードが全体のわずか8%だった企業が、DSP IPターゲティング広告へ切り替えたことで対象リード率を55%まで劇的に引き上げた事例もあります。単なる獲得件数ではなく、質の高い商談化率を重視する責任者に適した手法です。
参照元:営業DX.jp|【ABMノウハウ】特定のターゲット企業にだけバナー広告を出稿してリードを獲得する方法【DSP IPターゲティング広告】(https://flued.jp/eigyou-dx/columns/abm-knowhow/)
リスティング広告などの検索連動型施策は、ユーザーが自発的に検索行動を起こさなければ広告が表示されません。そのため、ニッチな商材や市場認知がまだ低い新規事業では、検索ボリュームの不足により広告が機能しないことが多々あります。一方、ABMターゲティング広告は「配信したい企業リスト」をもとにこちらからアプローチするため、需要が顕在化していないターゲット層に対しても先回りして接触を図ることができます。待つだけでなく、自ら需要を創り出す「攻め」の新規開拓を求める営業組織と非常に相性が良いと言えます。
広告の配信精度をさらに高めるには、広告ツール型のABMツールを導入することが近道です。IPアドレスやCookie情報を解析して特定企業にのみ表示するツールをはじめ、精緻な法人マスタデータを用いて業種・規模をセグメントするツール、インテントデータ(デジタル上の行動履歴)から今まさに検討中の企業を特定するツールなど、目的別に多様な選択肢があります。選定の際は、既存のCRM/MAツールとの連携のしやすさ、対応チャネル(Web・SNSなど)、ターゲティングできる粒度(企業・部署・役職)を比較し、自社の体制に最も合うものを選びましょう。
精度の高い広告も「配信して終わり」では十分な効果を発揮しません。広告をクリックしてLPから問い合わせがあった直後(理想は5分以内)に、インサイドセールスが架電してフォローする仕組みを構築することが重要です。リード発生直後は顧客が課題をまさに検討しているタイミングであるため、接続率や商談化率が高まりやすいと業界でも広く言われています。運用を開始する前に、広告部門とインサイドセールス部門でSLA(対応スピードや品質の基準)をすり合わせ、広告の配信量と架電のキャパシティに無理がないよう整合性を取っておくことが成功の秘訣です。
ABMのWeb広告・ターゲティング広告は、IPアドレスや企業属性データ、SNSのマッチドオーディエンスを用いて狙った企業だけに配信できる手法で、対象外リードを構造的に減らし商談化率を高められます。広告ツール型ABMツールとインサイドセールスを組み合わせ、配信精度と反応スピードを両立させることが成功の鍵となります。
ABMツールと一口に言っても、その活用方法は営業部門とマーケティング部門とで異なります。
ここでは、インバウンド営業・アウトバウンド営業それぞれの特性に応じて、アプローチ可能なフェーズや手法に違いのあるツールをご紹介いたします。ツール選びの参考にしてください。